Shipping News "The Delicate"


新曲に加え、前作「Flies the Fields」の既発曲も入り混じったライヴ録音のアルバム。Touch and Goの縮小に伴い、傘下にある元々所属していたQuarterstickも休止状態になったため、Karate Body、African Tapeから発売されたのだと思われます。
ムスタングの様に荒れ狂う重低音のサウンド、それが強引に押し込められた画一的なリズム!#1 Antebellum(訳/戦前)のうねるようなベースラインで激しい幕開け。
#2 This Is Not an Exitでは更に重く、メタリックで鋭利なギターの音色とヴォーカル。
#3 (Morays Or) Demon、「Flies the Fields」にも収録されている曲。特別なアレンジは無いですが、ライブ音源特有の生々しさとヘヴィさが格好良し。
#4 7sはイントロで前作のSheets and Cylindersの様な儚い音色のポストロック風から、徐々に不穏で凶暴なハードコアに移り変わります。Slintの雰囲気を彷彿とさせる名曲。
シングルで先行リリースされ、Shellacの名曲Copperをアレンジした様なニヒルでハイスピードな#5 The Delicate。
そして06年の来日公演時に東京の渋谷O-Nestで録音された#6 Axons and Dendrites。殺伐とした雑踏を抜け出し、果てなく続く地平を駆けていく様な、珠玉の一曲だと言うことを再認識。
重くスロウなポストロック調のインスト曲#7 Half a Houseをインターバルに挟み、痙攣の様なギターフレーズの#8 Bad Eveで徐々にボルテージを上げ、唸り狂う強烈な演奏と張り裂ける様なシャウトで、アルバム中最も激しい#9 Do You Remember the Avenues?がラストを飾り、演奏後の名残惜しい余韻を、ライブ録音ならではの歓声が掻き消してくれます。
前作「Flies the Fields」ではフォークやポストロックの要素が色濃く、For CarnationやMogwaiの様にインテリジェンスを強く感じる作風でしたが、今作ではまるでBastroやShellacに代表されるストレートで暴力的なノイズハードコアを叩き付ける様な作風。
USインディー・シーンの急激な変化の中、ルイヴィル、シカゴ源流のアメリカン・ハードコアの色褪せることの無い存在感を示した一枚です。
★★★★★

One Less Heartless to Fear [12 inch Analog]

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